
【ゴルフコースの評価基準を知る】「キャラクター」 記憶に残るゴルフ場の個性とは

世界トップ100選の基準に用いられる5つの項目のうち、
たとえば、コースが時代の常識を打ち破るような独創的な設計で生まれた場合や、その土地の自然地形を誰も想像しなかった方法で取り込んでいるような場合には、キャラクターの評価が高くなります。逆に、設計としては整っていても、他の多くのコースと似たような立地や構成であれば、この項目での評価は高くなりません。重要なのは「記憶に残ること」ではなく、「他と一線を画す何かがあるか」という点です。
また、設計者の個性が色濃く出ているコースや、その土地の特徴を活かしたコースも、キャラクターを高く評価される要因となります。たとえば、採石場に造られ、全米オープンの会場になったチャンバーズベイなど特殊な地形を活かしたコース設計などはその一例です。
個人的に感銘を受けたコースで言えば、アイルランドのウォーターヴィル ゴルフ リンクスには「マス・ホール(Mass Hole)」と呼ばれる特別なホールがあります。
このパー3の12番ホールは、18世紀、アイルランドではカトリックのミサが禁止されており、地元の信者たちはこのホールのグリーン手前の窪地で密かにミサを行っていました。設計者のエディ・ハケットは当初、この窪地にグリーンを配置する予定でしたが、地元の労働者たちが「聖なる場所」として作業を拒否したため、グリーンは対岸の砂丘の上に設けられたという逸話が残ります。
また、日本国内で川奈ホテルゴルフコース富士コースが持つ「キャラクター」は、日本のゴルフ場の中でも際立っています。相模灘に面した断崖上という唯一無二のロケーションに、日本のゴルフの礎を築いた1人、C.H.アリソンが手がけた設計。自然地形を活かしたダイナミックなルーティングと、灯台を狙う11番ホールなどの象徴的な演出は、視覚的にも記憶に残ります。加えて、設立者・大倉喜七郎の「文化としてのゴルフ」を追求する理念がコースに深く息づいており、民家や鉄道が視界に入らぬようしたという徹底ぶりも、日本で唯一無二の特徴でしょう。開場から1世紀以上経った今もその空気感を守り続ける同コースは 「時代と地域を超えた唯一無二のキャラクター」といえるでしょう。
キャラクターという項目は、ある意味で最も抽象的で、だからこそ最も深くゴルフ場の設計思想に迫る評価軸かもしれません。そのコースをプレーすることで、何か設計的な学びや、その背景に発見があるか。その問いに「ある」と答えられるなら、そのコースには優れたキャラクターがあるのかもしれませんね。