
海外と日本のゴルフ場におけるメンバー制度の違い

ゴルフクラブの会員権は世界中に存在し、その国のゴルフ文化や社交のあり方、歴史までも映し出す存在です。今回は、日本、スコットランド、アメリカの3つを例に、その制度と背景を紹介しましょう。
日本:会員権市場とプレー権文化
日本の多くのメンバーシップクラブは、バブル期以降に激動を経験しました。「預託金制」を採用し、会員権が売買可能なクラブが多く存在します。入会には推薦者と面接が必要な場合が多く、法人名義での入会も一般的です。正会員・平日会員・週日会員など細かな区分があり、会員権相場は景気によって変動します。年会費は5万〜15万円程度で、会員でもプレーごとに料金が必要です。
会員権は「プレー枠を確保する権利」としての側面と、クラブ競技に出場し週末のクラブライフを楽しむための権利と捉える方が多いと思います。首都圏では車で1時間程度の距離にあるクラブを選ぶことが多く、アクセスの良さは重要な選定基準ですが、毎週必ず訪れる場所、というケースは減ってきているかもしれません。

日本のゴルフ場
スコットランド:地元コミュニティの誇り
ゴルフ発祥の地スコットランドでは、名門クラブの多くが地元会員を中心に運営されています。入会には推薦者と賛同者が必要で、人気クラブではウェイティングリストが数年から十数年に及ぶこともあります。
例えばミュアフィールド(The Honourable Company of Edinburgh Golfers)は居住要件を持ち、地元密着型として知られます。また、全英オープン開催地であるロイヤル・トゥルーンは海外会員枠を設けていますが、その数は限られています。入会金はおよそ100万円、年会費は50万円ほど。日本と比べると入会条件は厳しい一方、メンバーは無制限にプレーでき、クラブ運営費の多くは年会費で賄われています。
クラブへの帰属意識が強く、同じゴルフ場を共有する仲間としての信頼が入会の条件となります。平日(月・火など)をビジター開放日とし、国内外からのゴルファーを受け入れるクラブも多く、昨今ではそのプレーフィーが5万〜10万円に設定されるケースも増えています。仲間が集う場所、という側面が強い印象です。

キングスバーンズ ゴルフ リンクス
アメリカ:施設と社交のための加入費用
アメリカのプライベートクラブは、豪華な施設とサービス、そして社交の場としての機能が際立ちます。入会金は数万ドル規模が一般的です。
フロリダ州のベイヒル クラブでは入会金が約55,000ドル(約800万円)、年会費が約6,000ドル(約85万円)。フル会員のほか、スポーツ会員や家族会員など多様な種別があり、ゴルフだけでなく会員同士のネットワーキングの場としても利用されます。アメリカではプールやジム、テニスコート、レストランなど付帯施設の充実度によって年会費が変動し、さらに年間1,200ドル(約15万円)程度の飲食ノルマが課されることもあります。ゴルフプレーは原則無料で、カート代のみが必要です。
同じフロリダ州でも、セミプライベートクラブでは入会金なし、月会費300〜500ドル(約5万〜7万円)程度で加入可能な場合もあります。南部では「スノーバード会員」なんて制度も。そんなクラブでは、12月〜3月限定の会員権を販売し、北欧など、冬場ゴルフができない地域のゴルファーを受け入れているケースもあります。
一方、完全プライベートでビジターを一切受け入れないクラブでは、年会費が200万〜300万円に達するケースも珍しくありません。そんなクラブのゴルフ場は、ガラガラなんてことも。「どのクラブに所属しているか」がステータスとなる点は世界共通ですが、アメリカではライフスタイルに合わせた選択肢の幅が広いのが特徴です。

ベイヒル クラブ&ロッジ 17番ホール
それぞれの特徴の違い
日本では会員権はプレー枠や競技参加枠としての意味合いが強く、法人利用や接待文化とも結びついています。スコットランドでは地域社会への帰属意識が重視され、会員は仲間として迎え入れられます。アメリカではゴルフを中心としつつも、クラブ全体を活用した社交・娯楽の場としての役割が大きい傾向があります。
同じ「メンバーシップ」でも、その意味や価値は国によって大きく異なります。それぞれの背景を知ることで、海外の名門クラブ訪問がより特別な体験となるでしょう。
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