熱狂の「LIVゴルフ」――同じフェアウェイに立つ贅沢
「事実は小説よりも奇なり」――スポーツの神様は、時に理屈を超えたシナリオを用意してくれます。
2026年2月、南オーストラリア州のアデレード。PGA TOURの対抗馬のような形で始まった新しいリーグ、「LIVゴルフ」の舞台で、かつての天才アンソニー・キムが、12年もの空白を経て勝利を挙げました。「タイガーの後継者」と称されながら、度重なる怪我と依存症によって表舞台から忽然と姿を消した男。彼がバーディを積み重ねるたび、伝統的なトーナメントの拍手とは一線を画す、地鳴りのような熱狂がザ・グランジGCを揺らしました。
日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、世界では今、この「観戦の面白さに特化した」圧倒的なエンターテインメント性が高く評価され、新たな熱狂を生んでいるのです。
12年間の沈黙を破ったドラマ
かつてのキムは、派手なベルトバックルを輝かせ、誰よりも強気にピンを狙うカリスマでした。しかし、表舞台から姿を消すと、ゴルフ界からは半ば忘れ去られた存在となっていたのも事実です。
「娘に戦う父親の姿を見せたい」。その一心でLIVゴルフという新天地に突如舞い戻ったキムは、復帰後2年間の苦闘を経て、このアデレードでかつてのキレを取り戻しました。様々な苦難を乗り越え、10余年の時を経て、再びスターダムへとのし上がったのです。
LIVゴルフが提示する、新しい観戦のパラダイム
ゴルフ観戦に新しい価値、新しい楽しみを。その一環としてLIVゴルフが提唱したのは、全選手が同時にスタートする「ショットガン方式」の採用でした。そして、ゴルフだけに留まらない音楽フェスのような雰囲気を同居させたのです。
その象徴が12番パー3、通称「ザ・ウォータリング・ホール」。360度をスタジアム型の観客席が囲み、DJが刻むビートの中で数千人がビールを掲げてバーディを祝福します。古き良き静寂を重んじる方には刺激が強いかもしれませんが、この「コロシアム」が生む選手とギャラリーの一体感は、現代ゴルフが到達した一つの極致といえるでしょう。実際、今大会はオーストラリア最大のゴルフイベントにまで成長しました。
憧れのフェアウェイに、自らの足跡を刻む
熱狂の舞台となった「ザ グランジGC」は、会員制の名門でありながら、実はビジターにも広く門戸を開いています。ロイヤル メルボルン ゴルフ クラブなどと同様、オーストラリアの名門は、海外からのゴルファーを温かく迎え入れてくれる土壌があります。特筆すべきは、大会と同じ「コンポジット・コース」をプレーできる機会が用意されていることです。東西36ホールから選りすぐられた18ホール。アンソニー・キムやブライソン・デシャンボーがプレーしたフェアウェイを歩き、同じグリーンを狙う――そんな特別な体験が叶います。
アデレードでのゴルフ旅は、その利便性の高さも魅力です。日本からの直行便はありませんが、メルボルンやシドニーなどと組み合わせると良いでしょう。空港からコースまでは車で約20分。午前着の便で降り立てば、その日の午後にはティイングエリアに立てるという、驚異的なタイパを誇ります。ただし、開催コースでのプレーは世界的に人気が高いため、半年以上前から計画を立てるのが賢明です。個人では確保しづらいコンポジット・コースの特別枠も、旅行会社を通すことでスムーズにアクセスできるでしょう。そしてラウンド後は、車を1時間ほど走らせて豪州屈指のワイン産地「バロッサ・バレー」へ足を伸ばすのがおすすめです。
【オーストラリア名門ゴルフ紀行 7日間】
参考までに、豪州が誇る3大都市と世界的な名門を巡るプランをご紹介します。
- 1日目:日本発(夜行便でメルボルンへ)
- 2日目:午前メルボルン着。午後「ロイヤル メルボルン GC」でプレー(メルボルン泊)
- 3日目:午前「キングストン ヒース GC」でプレー。夕方の国内線でアデレードへ(アデレード泊)
- 4日目:午前LIV開催地「ザ グランジGC」でプレー。午後はバロッサ・バレーでワイナリー巡り(アデレード泊)
- 5日目:午前の国内線でシドニーへ。午後はオペラハウスなど市街散策(シドニー泊)
- 6日目:午前「ニュー サウス ウェールズ GC」でプレー(シドニー泊)
- 7日目:帰国の途へ(シドニー発〜日本着)
LIVゴルフはシンガポールのセントーサ、スペインのバルデラマ、そして米国のドラールなど、世界中のアイコニックなコースで開催されています。メジャーやPGA TOUR開催コースは米国や英国に集中しがちですが、LIVゴルフの舞台はアジア、豪州、欧州にも及びますから、新しい旅の動機を作ってくれるはずです。