Daisen
中国山地にそびえる伯耆富士は自然と歴史ロマンに満ちあふれた名峰
FEATURE
大山は鳥取県西部に位置する中国山地の最高峰で日本百名山に選ばれている名峰です。北・西側から眺める姿は端正な円錐形で、伯耆(ほうき)富士や出雲富士の異名を持ちます。大山の名は山全体を表し、一般的な山頂は弥山(みせん)です。「出雲国風土記」には神の住む霊山と記され、歴史的にも興味深い山です。日本海からほど近い1,700m超の山であるため厳しい気象条件となりますが、植生も特徴的で、自然美あふれる雄姿を見せてくれます。
ポイント1
大山の一般的な山頂である弥山は標高1,709mで中国山地の最高峰です。日本海に近い厳しい気象条件の中でも希少な植物を育んでいます。山腹に広がる日本屈指の規模を誇るブナ林や山頂から眺める日本海などの壮大な風景はまさに絶景です。山麓から山頂を目指す登山・トレッキングは十分な達成感を味わうことができるでしょう。
ポイント2
登山ルートはよく整備され、所要時間は片道3時間ほどで危険な箇所もないので、初級者でも比較的歩きやすい道です。山頂は弥山で標高は1,709mです。最高峰は標高1,729mの剣ヶ峰ですが、稜線が崩れて危険なため立ち入り禁止となっています。大山は伯耆富士と呼ばれるだけあって、山頂からの眺めの素晴らしさは特筆すべきものです。
ポイント3
大山は「出雲国風土記」に「大神岳」「火神岳」と表記され、神が住む霊山として古より人々に崇められてきました。また、奈良時代には富士山、白山、熊野と並ぶ山岳修行の霊場として大山寺が建立されました。大山中腹に現在も建つ大山寺には数々の重要文化財が残り一見の価値があります。
エリア | 中国・四国 |
---|---|
標高 | 1,709m(弥山) |
適期 | 6月~10月 |
アクセス | ■電車・バス・タクシー JR米子駅から大山寺までバス約50分 ●車 米子よなご自動車道「溝口ICまたは米子IC」から車で15分 |
備考 | 百名山 |
RECOMMEND
最もポピュラーな夏山登山道コースで登頂、下山時に古を訪ねる
大山の登山・トレッキングは日帰りの行程です。大山の登山・トレッキングのメインコースは夏山登山道で、危険個所がなくよく整備された登山道なので初級者にもおすすめのコースです。国の天然記念物であるダイセンキャラボクや西日本最大級のブナ林も見どころです。中国山地の最高峰であり、古くから信仰の対象とされている大山は、現在も参詣道が残っています。参道を抜けブナの森を進むと、六合目避難小屋から眺望が開け、八合目からは木道が整備されていて、キャラボクの群生を観賞できます。山頂付近からは日本海や島根半島を望むことができます。下りは、行者谷分かれから行者登山道に入り、大神山神社奥宮と石畳の参道を抜けて戻るルートです。帰路は、大山寺もぜひ参詣しましょう。
[往路]夏山登山口…行者谷分かれ…六合目避難小屋…大山山頂
[復路]大山山頂…六合目避難小屋…行者谷分かれ…元谷避難小屋…大神山神社奥宮…大山寺…夏山登山口
… 徒歩
夏山登山口から夏山登山道を歩き、西日本最大級のブナの森を抜けて登ります。春から初夏の新緑や秋の紅葉の森を歩けば心身ともに癒されることでしょう。大山は1合目から9合目までの表示があり、行程の目安になります。1合目~5合目まではよく整備された丸太の階段で、歩きやすく快適な登山・トレッキングを楽しめます。山腹に広がるブナ林の新緑や紅葉を見ながら歩くことができます。5合目を過ぎるとブナ林が途切れて視界が開けます。展望を楽しみながらゆっくり歩きましょう。大山の登山道のトイレ施設は弥山頂上及び元谷の避難小屋だけなので、トイレは登山前に済ませましょう。
6合目の避難小屋からは屏風岩と呼ばれる大山の荒々しい北壁が目の前に現れます。この辺りからは急な登りとなり足場も悪くなります。落石に注意して慎重に歩きましょう。8合目付近の木道を登ると徐々に緩やかになり、広さ8ヘクタールのダイセンキャラボクの群生が見られます。ダイセンキャラボクは国の天然記念物に指定されており、群生の高さは数mにも及びます。8合目付近から眼下を見下ろすと、遠く日本海や中国地方の山々が見渡せる絶景が広がっています。
8合目からさらに木道を進むと、頂上の避難小屋が見えてきます。山頂からの景色は360度の大パノラマです。大山から連なる尾根筋が東西に続き、米子平野やさらに西の弓ヶ浜半島や中海、島根半島が一望でき、南には四国の山々まで望めることもあります。山頂周辺を歩くと空中散歩のような浮遊感が味わえます。山頂付近では強い風に当たることがあるので、防寒対策をしましょう。夏山や紅葉シーズンには山頂の避難小屋内で記念品や飲食物を購入できます。
下山時には大神山神社奥宮と大山寺の参拝をしましょう。大神山神社奥宮は後ろ向きの神門を持つ珍しい社で、重要文化財です。奥宮へ続く石畳の参道は日本一の長さがあり約800mも続きます。紅葉の名所としてもよく知られています。大山寺は奈良時代に建立された天台宗別格本山の約1,300年の歴史を刻む古刹です。下山観音堂の御本尊である十一面観音菩薩や阿弥陀堂と内部に安置されている阿弥陀三尊は国の重要文化財に指定されています。
豊かな自然と歴史ロマンで魅力あふれるあふれる大山の登山・トレッキング
毎年6月最初の週末に開催される「大山夏山開き祭」には多くの登山者や山を愛し敬う人々が集まり、大神山神社奥宮が一年で最も熱くにぎわう時です。特に観光客の人気を集めるのは前夜祭として開催される「たいまつ行列」です。神事を終えた社殿から終着点となる博労座をめざし、約2,000人が参道を行列となってたいまつを持ち、炎の河の如く練り歩く様子は必見です。毎年全国から多くの観光客が押し寄せ、荘厳で神聖な炎を観賞します。夏山開きの後、大山では本格的な夏山シーズンの到来となります。大山夏山開き祭前夜祭の見学は麓のホテルなどに宿泊することをおすすめします。
大山には日本に生息する野鳥の3分の1以上の種類と約1,000種の昆虫が生息するといわれています。6合目までのエリアには西日本最大規模のブナの森があり、8合目付近では特別天然記念物にも指定されるダイセンキャラボクの日本最大規模の純林が一面に広がります。キャラボクは幹が横へ這うように伸びるので厳しい自然環境に適しています。大山は中国山地から離れた独立峰であることから季節風の影響を受け厳しい気象環境下にあるため森林限界も1,300m付近と他の山域よりも低くなっています。気候の異なる境界線にある地理的条件で様々な植物が混在する自然の宝庫です。
大山の麓にある大山寺には多くの地蔵尊があり、大山寺の街中や夏山登山道の登り始めの辺りにもたくさんの石仏を見かけます。石仏巡りをしながら登山・トレッキングを楽しむのも良いでしょう。大山寺の阿弥陀堂は山内最古の仏堂で樹木の中に建つ姿は新緑の頃や紅葉の時期に訪れるとより美しく感じられることでしょう。大山寺には往時を偲ばせる貴重な文化財が多く、阿弥陀堂の仏像を観賞すれば、より一層大山の歴史の深さを感じられます。
Recent Articles