全米パブリックトップ100の至宝を巡る旅
世界中のゴルファーにとって、米ゴルフダイジェスト誌が隔年で発表する「America's 100 Greatest Public Courses(全米パブリックコース・トップ100)」は、旅先選びの重要な指標のひとつです。
このランキングの魅力は、会員権がなければプレーできない名門プライベートクラブとは異なり、「予約さえ取れれば誰でもプレーできる」という点にあります。1位に君臨するペブルビーチ ゴルフリンクスをはじめ、世界中のゴルファーが憧れるコースが数多く名を連ねています。
私自身、このリストの上位のコースをいくつか訪れてきましたが、「もう一度プレーしたいコースは?」と聞かれた時に真っ先に思い浮かぶコースのひとつが、今回ご紹介するパサティエンポ ゴルフクラブです。
ペブルビーチほどの知名度はないかもしれませんが、オーガスタ ナショナルGC誕生のきっかけとなった場所であり、設計家のアリスター・マッケンジーが最も愛したコースでもあります。
サンタクルーズに位置するパサティエンポは、ペブルビーチから車で約1時間。カリフォルニアを訪れるなら、ぜひペブルビーチと組み合わせて巡っていただきたいコースです。
伝説のオープニングデイと、オーガスタ誕生のきっかけとなった出逢い
サンフランシスコ国際空港から南へ車で約1時間半。ペブルビーチへ向かう途中に立ち寄ることができるサンタクルーズの丘陵地に、パサティエンポ ゴルフクラブはあります。
スペイン語で「余暇」を意味するその名前とは裏腹に、このコースはゴルフ史において極めて重要な意味を持つ場所です。
1929年9月8日の開場記念イベントには、2,000人を超える観衆が集まりました。創設者で全米女子アマ王者のマリオン・ホリンズ、全英アマ覇者のシリル・トーリー、そして後に「球聖」と呼ばれるボビー・ジョーンズがティーイングエリアに並びました。当時、ペブルビーチで開催された全米アマチュア選手権に出場していたジョーンズは、ホリンズの招待を受けてこの地を訪れます。
ここで彼は、アリスター・マッケンジーが描いたレイアウトに強い衝撃を受けたのです。
後日ジョーンズはホリンズに対し、「パサティエンポのグリーンは私がこれまで見た中で最高だった」と手紙を送っています。そして数年後、自らが構想していた新しいコースの設計をマッケンジーへ依頼します。そのコースこそ、オーガスタ・ナショナルGCです。ゴルフ史上最も有名なコースのひとつは、このパサティエンポとの出会いがなければ誕生しなかったかもしれません。
マッケンジーが愛したコース
アリスター・マッケンジーの設計は、現代でもまったく古さを感じさせません。自然地形を活かしたフェアウェイ、視覚的な錯覚を利用したバンカー配置、そして大胆なグリーンコンプレックス。プレーヤーは常に選択を迫られます。
特に16番ホールは圧巻。深い峡谷を越えて巨大なグリーンを狙うこのパー4を、マッケンジー自身は「私が設計した中で最高の2ショットホール(パー4)」と評しました。
90年以上前に設計されたにもかかわらず、現代のクラブとボールを使ってもなお十分な戦略性を持ち続けています。マッケンジーもこのコースを生涯愛し、6番ホールを見下ろす場所に自宅を建て、晩年をここで過ごしました。
1934年、オーガスタ完成直前にその生涯を閉じた後、遺言により遺灰はパサティエンポへ散骨されました。
カリフォルニアを代表するゴルフ巡礼ルート
パサティエンポを訪れる最大の利点は、ペブルビーチとの組み合わせができるということです。サンフランシスコ国際空港を起点にすれば、移動距離も無理がなく、アメリカ西海岸を代表する名コースを効率よく巡ることができます。
- Day 1:サンフランシスコ到着、サンタクルーズ泊
- Day 2:パサティエンポ ゴルフクラブ
- Day 3:モントレー半島へ移動
- Day 4:ペブルビーチ ゴルフリンクス
- Day 5:スパイグラスヒル ゴルフコース
- Day 6:ザ リンクス アット スパニッシュベイ
- Day 7:サンフランシスコへ戻り帰国
パブリックコースだけでありながら、全米パブリックコース・トップ100、世界のゴルフ史に残るコースを連続してプレーできる旅程です。
パサティエンポの予約枠は比較的限られていますが、事前予約であれば十分にプレーすることができます。ペブルビーチを目的地にする旅の途中に、ぜひ1日余分に時間を取り、このコースを組み込んでみてください。
おそらく帰国後、「一番印象に残ったのはどこだった?」と聞かれた時に、パサティエンポの名前を挙げる人も少なくないはずです。
ラウンド後は、クラブハウス内のレストラン「マッケンジー」でゆっくり過ごしてみてください。カリフォルニアの柔らかな夕日を眺めながら地元のビールを飲んでいると、先ほど歩いたフェアウェイと、マッケンジーが暮らした丘のシルエットが目に入ります。パサティエンポで遥かなるオーガスタの原点に触れ、ペブルビーチで太平洋の風を受ける。全米パブリックトップ100を巡る旅は、非常に充実したスタートになるはずです。
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