Senjyogatake
秀麗な山容の南アルプスの女王
FEATURE
仙丈ヶ岳は南アルプスの北部に位置する標高3,033mの山です。優雅で美しい姿から「南アルプスの女王」とも呼ばれ多くの登山者に愛されています。登山道は全体的に歩きやすく危険個所も少ないので、日帰りの登山・トレッキングも可能なことから南アルプス入門の山としても人気があります。夏の高山植物の華やかさ、秋の紅葉の彩り、北東には甲斐駒ヶ岳、東に鳳凰三山、南東には北岳などの南アルプスの名峰が間近に見えます。
ポイント1
一般的に仙丈ヶ岳は北沢峠がスタート地点となります。北沢峠の標高は2,030mですので3,033mの山頂との高低差は1,063mとなります。高低差だけをみると決して楽な行程ではありませんが、登山道は全般的に歩きやすく、危険個所も少ないので、他の南アルプスの山々と比較すると登りやすい山といえます。日帰り登山・トレッキングが可能な距離と高低差で、南アルプス入門の山といわれる所以です。登山道の要となる位置に山小屋があることも安心して歩くことができる要素です。
ポイント2
仙丈ヶ岳は馬ノ背尾根、仙塩尾根、小仙丈尾根、地蔵尾根の4つの尾根と3つのカール(圏谷)を持っており、広大な景観をつくっています。山頂付近からの眺望はとてもよく、南には塩見岳、東には大菩薩嶺や富士山、近くには北岳や間ノ岳、北には八ヶ岳、間近に甲斐駒ヶ岳、そして遠くに北アルプスや中央アルプスの山並みを見ることができます。仙丈ヶ岳からは日本一の標高の富士山と二番目の北岳、そして三番目の間ノ岳と、日本の山の標高第1位から3位を一度に見ることができるアルプスの大展望台です。
ポイント3
仙丈ヶ岳は薮沢カール、大仙丈カール、小仙丈カールと3つのカールを持ちます。カールとは「圏谷(けんこく)」とも呼ばれ、氷河によって削られた地形で、スプーンで削ったような丸みを帯びたゆるやかな景観が特徴です。また、薮沢、大仙丈沢、小仙丈沢という3つの沢があり、沢やカールには多くの高山植物が自生します。それらによって初夏から夏の終わりにかけて高山植物の楽園となり、山の風景を彩ります。仙丈ヶ岳では様々な種類の高山植物が観賞できますが"仙丈"の名を持つ「センジョウアザミ」は南アルプスだけに見られる固有種です。貴重な固有種や種類が豊富な植物を愛でることができるのも3,000m級の山ならではの楽しみです。
エリア | 八ヶ岳・中央アルプス・南アルプス |
---|---|
標高 | 3,033m |
適期 | 7月上旬~10月中旬 |
アクセス | ■電車・バス・タクシー 伊那バスターミナルから、JRバス関東高遠線で高遠駅にて下車、高遠駅から仙流荘までタクシー利用 JR茅野駅から「南アルプスジオライナー(季節運行)」にて仙流荘まで1時間10分 ●車 中央自動車道伊那インターチェンジ又は小黒川スマートインターより仙流荘まで約40分 |
備考 | 注:広河原から北沢峠へ運行する南アルプス市営バスは2022年は林道が不通のため運休 |
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北沢峠から日帰りで山頂を目指す
仙丈ヶ岳の登山・トレッキングは北沢峠をベースにすることが一般的です。北沢峠には3軒の山小屋とテント場がありますので、宿泊することで朝早くにスタートして日帰りで歩くことができます。北沢峠からは周回コースを歩くこともできますので変化に富んだ登山・トレッキングを楽しめます。北沢峠を起点として馬の背、山頂、小仙丈ヶ岳を回り、再び北沢峠へ下るコースを紹介します。
往路:北沢峠…馬の背…仙丈小屋…仙丈ヶ岳
復路:仙丈ヶ岳…小仙丈ヶ岳…大滝頭…北沢峠
… 徒歩
北沢峠は仙丈ヶ岳の登山・トレッキングの起点として最もよく利用される場所です。周辺に山小屋が3軒、テント場が1箇所ありますので、前日に宿泊すれば翌朝の早い時間からスタートできます。仙丈ヶ岳から北沢峠を挟んで対峙する甲斐駒ヶ岳の起点にもできますので、日程の余裕があれば2座を登ることも可能です。北沢峠へは林道バスを利用してアクセスすることができます。伊那市側の仙流荘からは約55分です。なお、林道バスは林道の状況によって運行されない場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
北沢峠から仙丈ヶ岳へはいくつかのルートがありますが、最短時間で登頂できる小仙丈尾根のルートから登り始めます。小仙丈ヶ岳へ向かう合流点まで約2時間、そこからは馬の背ヒュッテを目指して歩きます。約1時間で馬の背ヒュッテです。ここで休憩をしてこの先の登りに備えましょう。もうひと登りで馬の背の稜線に取り付きます。この辺りは夏は高山植物、秋は紅葉を楽しむことができ、木々の間からは仙丈ヶ岳が望めます。後方には甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳が見えます。景色がよくなると疲れた体も元気がでます。ハイマツの中を登れば仙丈小屋に到着です。
仙丈小屋では登頂前最後のトイレを済ませて休憩をしましょう。2021年に新設された木製のテラスは絶景が見えると人気を呼んでいます。ここではランチやドリンクの販売もありますので、天気がよければ周辺の山々を眺めながら食事をとるという至福の時間を過ごすこともできます。小屋の前からは薮沢カールを眼下に歩いて山頂を目指します。山頂まではあとわずかです。
仙丈ヶ岳は日本百名山のひとつで、日本の3,000m峰21座のひとつでもあります。遠くに日本一高い富士山、近くには日本第2の標高の北岳や第3の間ノ岳、さらに仙丈ヶ岳とは対照に男性的な荒々しい山容の甲斐駒ヶ岳を望むことができます。仙丈ケ岳は3つのカールを抱えており、山頂から小仙丈ヶ岳に向かうルートの東側にある小仙丈カールでは様々な高山植物を見ることができます。岩場を越えると前方に小仙丈ヶ岳が見えてきます。このまま進めば合流点を過ぎて往路と同じ道を歩いて北沢峠に下山できます。
南アルプスの自然と雄大な景観を味わう登山・トレッキング
仙丈ヶ岳には北沢峠から山頂にかけて、こもれび山荘、長衛小屋、大平山荘、薮沢小屋、馬の背ヒュッテ、仙丈小屋と数多くの山小屋が点在しています。対峙する甲斐駒ヶ岳と比べても登山道にある山小屋は多く、登りやすいルートといえます。また、各山小屋は個性も豊かで、例えば、馬の背ヒュッテでは地元の鹿肉を使ったジビエカレーを提供して生態系の保護に一役買っています。また、仙丈小屋はランチでパキスタンやインドネシアの料理を食することができます。仙丈小屋自慢の絶景テラスでお好みのドリンクと共に食事を楽しんでみてはいかがでしょうか。
北沢峠にある長衛小屋には周辺で唯一のテント場(幕営地)があります。最大200張という広大な敷地には水場もあり、トイレも近くの小屋にあるので静かな環境の割には便利です。小屋の売店ではインスタント食品やお菓子、各種ドリンクの販売もありますので便利です。北沢峠バス停から歩いて10分ほどの位置ですので、重たいテント泊装備を背負って長時間歩くこともなく、テント初心者にもおすすめの場所です。
南アルプスの山は距離、所要時間が長いルートが多い中で、仙丈ヶ岳は日帰り登山・トレッキングが可能な希少な山です。日帰り登山・トレッキングのメリットは宿泊用の荷物を持たなくてよいので小さめのザックで歩くことができ、体力的な負担を軽減できることです。ただし、自分の体力と脚力、登山地図を読む能力、天候の変化に対する判断力、トラブルに対応できる知識と経験が必要です。早めにスタートをすることを心がけ、初級者は経験者と一緒に歩きましょう。
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