Odaigahara
清流や滝を楽しみながら、初夏にはシャクナゲの花が咲く頂へ
FEATURE
大台ヶ原は吉野熊野国立公園に含まれ、年間の降水量が 3,500mm以上になる国内有数の多雨地帯に広がります。大台ヶ原を水源とする清流の宮川は豊富な水量で美しい滝や深い淵を形作ります。黒部峡谷、清津峡とともに日本三大峡谷に数えられる大杉谷を歩き、途中で山小屋で1泊してから、初夏にはシャクナゲの花が咲き乱れる大台ヶ原へ向かい日本百名山にも数えられる最高地点の日出ヶ岳へ登る中級者向けのコースです。
ポイント1
日本三大峡谷の一つに数えられる大杉谷の周辺は日本屈指の多雨地帯にあたり、ここに降る雨は清流宮川の最上流部となります。清らかな水は谷を深く削り、落差のある滝を作り、時には激しい急流、時には深い淵となり、登山道からは大自然が作る造形美を楽しむことができます。
ポイント2
大杉谷の最上流部堂倉滝を過ぎて、徐々に標高が上がっていくあたりが「シャクナゲ坂」、そこを登り切って少し開けた場所が「シャクナゲ平」と呼ばれています。その名の通りこの辺りは5月中旬から下旬にかけてシャクナゲの花が見ごろを迎えます。日出ヶ岳周辺や大台ケ原の周遊歩道にもシャクナゲの群生地があり淡いピンク色の花が登山の疲れを癒してくれます。
ポイント3
大台ケ原の最高地点日出ヶ岳まで大杉谷峡谷を丸2日かけて登ってきたので相当山深い場所へ来たと錯覚しますが、尾鷲までは直線で15kmほどの距離です。海までの間に高い尾根もないので、山頂の展望台からは晴れていればキラキラと光り輝く熊野灘を見ることができます。
エリア | 北陸・近畿 |
---|---|
標高 | 1,695m (日出ヶ岳) |
適期 | 5月~11月 |
アクセス | 《大杉谷へ》 ■電車・バス・タクシー JR紀勢本線三瀬谷駅…(徒歩10分)…道の駅おおだい→大杉谷登山バス(エス・パール交通) 所要約90分・完全予約制(3日前までに要予約) ●車 紀勢自動車道大宮大台ICから一般道を通り大杉谷登山口まで約1時間50分(駐車場が少ないので登山バスの利用がおすすめです) 《大台ヶ原ビジターセンターへ》 ■電車・バス・タクシー 近鉄大和上市駅→大台ヶ原ビジターセンター(奈良交通) 所要約1時間50分 ●車 阪和自動車道美原JCT→南阪奈道路→国道165号「大和高田バイパス」→国道169号経由 所要約2時間30分 春、秋の観光シーズンや週末には、大台ヶ原ドライブウェイが混み合うことが予想されますので、バス利用がおすすめです。 |
備考 | 百名山 |
RECOMMEND
日本三大峡谷「大杉谷」から大台ケ原へ
日本有数の多雨地帯として知られる紀伊半島の東部を流れる宮川の上流部にあたる大杉谷は黒部峡谷、清津峡とともに日本三大峡谷に数えられています。豊かな水量が作る沢山の滝や淵を眺め吊り橋を渡ったり河原を歩いたり、時には高度感のある崖のふちを歩く渓谷ルートです。大杉谷を超えたあたりからは一気に大台ケ原の最高地点日出ヶ岳の山頂を目指して標高を稼ぐ登りになりますが、この辺りは初夏にはシャクナゲが淡いピンクの花を咲かせ訪れる登山者の目を楽しませてくれます。山頂付近ではシロヤシオやドウダンツツジなどツツジ科の花も多く、花の百名山にも数えられています。日出ヶ岳山頂エリアを周遊する歩道も整備されています。山頂から下山のバスが発着するビジターセンターまでは約30分です。
[往路]大杉谷登山口…桃ノ木山の家(宿泊)…粟谷小屋…日出ヶ岳
[復路]日出ヶ岳…大台ヶ原ビジターセンター
… 徒歩
登山口から岩をくりぬいた水平歩道のような道や、いくつかの吊り橋を通り、千尋の滝を超え、出発から3時間30分ほど歩くと、シシ渕に到着します。大杉谷には多くの淵や滝がありますがその中でも見逃せない秘境ポイントです。両側に絶壁のようにそびえる岩とその間に溜まる深緑の淵、その奥に流れ落ちるニコニコ滝のコントラストは、自然の創り上げたアートで、絶好の撮影スポットです。山の空気と清流が作り出すマイナスイオンを体中に浴びながらここまでの疲れを癒して一休みしましょう。
宿泊した山小屋からさらに大杉谷の上流部へ向かいます。日本の滝百選にも選ばれた七つ釜滝、光滝、隠滝などいくつかの滝を眺めながら約3キロ、2時間ほど歩くと大杉谷の最上流部にあたる堂倉谷にかかる堂倉滝が見えてきます。堂倉滝はシシ渕と並ぶ秘境スポットで、落差は20mあり、滝つぼはエメラルドグリーンの渕になっています。登山道の堂倉滝吊り橋を渡ったところから滝の近くへ降りていくと、ここが大杉谷最後の滝です。清流の峡谷はここまでで、これから先は山頂まで標高差800mを徐々に登っていきます。流れる滝の音を聞きながら一休みして装備のチェックや水分と行動食の補給をしましょう。
大台ケ原の最高地点日出ヶ岳は日本百名山ですが、花の百名山にもその名を連ねています。とくに有名なのが5月中旬から下旬にかけて淡いピンク色の花が咲くシャクナゲです。大杉谷から登るルートにはその名を冠した、シャクナゲ坂やシャクナゲ平という場所があります。山頂周辺にもシャクナゲの群生地があり、シャクナゲ坂あたりより標高が高いため少し開花時期は遅いようです。6月に入ればアケボノツツジ、サラサドウダン、シロヤシオなどのツツジ科の花が一斉に見頃を迎え、初夏の大台ケ原は色とりどりの花々に彩られています。
山小屋からおよそ5時間30分、大台ケ原最高地点の日出ヶ岳に到着します。山頂の展望台には多くのハイカーや観光客の姿が見られます。ここへは大台ケ原ドライブウェイを利用して山頂の駐車場から40分ほどでくることができます。整備された周遊歩道を日出ヶ岳山頂から尾根伝いに40分ほど歩くと東屋のある尾鷲辻に出ます。そこから30分ほど歩き岩尾根の狭い道を10分ほど下ると、大台ヶ原一の絶景ポイント「大蛇嵓(だいじゃぐら)」に到着します。大蛇嵓はその名の通り、蛇の頭の形をした大きな岩と蛇の背中のような岩場です。岩の先端から眼下の谷をのぞき込めば目のくらむような高低差800mの大絶壁です。鎖柵はありますが、足を滑らせ無いよう注意しましょう。山頂の周遊コースを歩くには山小屋を早朝出発しないと帰りのバスの時間に間に合わなくなる恐れもあります。山頂の小屋にもう1泊するのもおすすめです。
紀伊山地の奥深い秘境・大杉谷の魅力
大杉谷のほぼ中間点に建つ「桃ノ木山の家」は昭和15年創業の老舗の山小屋です。営業は4月末から11月末までです。山深い渓谷の地に建っていますが、収容人数250名と近畿地方でも最大級の山小屋です。個室が全7室あり、グループでの利用も可能です。山小屋自慢のお風呂の湯舟は特製の檜風呂です。山でお風呂に入れるというだけでも贅沢ですが、宮川が流れる大杉谷は水が豊富なのでしっかりお風呂を楽しみましょう。素泊まりでも宿泊できますが、とんかつ、ハンバーグ、フライなどのおかずと大杉谷の水で炊いたご飯は絶品なので、朝夕2食付きの宿泊がおすすめです。
大杉谷の渓谷には大きいものから小さいものまで全部で11のつり橋がかかっています。ほとんどの吊り橋が両側からワイヤーで引っ張り、中央に木の板をつなぎ合わせて人ひとりが通れる幅しかない簡素なもので、歩くと微妙に揺れます。エメラルド色の淵にかかる吊り橋や滝を眺められる吊り橋など多種多様で、新緑の季節や秋の紅葉シーズンなど季節や時間によって変化する周囲の森や川の流れと一緒に撮影すれば吊り橋そのものが絶好の「映える」被写体にもなります。
大杉谷のルートは峡谷を歩くため、ところどころ幅の狭い登山道があります。スタートしてすぐの大日嵓(だいにちぐら)では岸壁をコの字型にくりぬいた水平歩道を鎖につかまり進んでいく場所もあります。またシシ渕の手前などにも鎖が張られた箇所があります。鎖場ではあまり鎖に頼らずあくまで体を支える補助として使うように心がけましょう。桃ノ木山の家を出てしばらく進み七ツ釜滝を過ぎたところが崩壊地と呼ばれる大きな岩がゴロゴロと行く手を阻んでいる箇所があり、ここは平成16年9月の台風21号による被害で、斜面が崩壊して壊滅的な打撃を受けた場所です。当時の大きな崩れはそのままになっており、自然の力の恐ろしさを目の当たりにできます。赤ペンキの丸印で歩きやすく誘導されていますのでルートを外すことのないように注意して進みましょう。
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