Ibukiyama
山頂に広がる花畑が登山の疲れをいやしてくれる伊吹山の魅力
FEATURE
伊吹山は滋賀県と岐阜県の県境にそびえる日本百名山の1つで、山頂は滋賀県に属します。山体はどっしりとして周囲に他の山がない独立峰であるため遠方からもよく見えます。古くから信仰の山として崇められ、東征中のヤマトタケルノミコトが荒神を退治するために登頂したという伝説でも知られています。山域に自生する薬草や亜高山植物、野鳥、昆虫の宝庫としても知られ、山頂の花畑は、国の天然記念物に指定されています。
ポイント1
伊吹山は滋賀県と岐阜県の県境にそびえ、その西側には日本一の湖である琵琶湖が広がります。山頂エリアにある展望台からは湖北エリアの景観が広がり、西国三十三観音の札所として多くの参拝者が訪れる竹生島、その向こうには武奈ヶ岳をはじめとする比良山地が連なっています。
ポイント2
新・花の百名山にもその名を連ねている伊吹山では春から秋にかけて様々な植物が花を咲かせ、登山者の目を楽しませてくれます。古くから伊吹百草といわれるように薬草も多く自生しています。草花の種類は1,200種といわれ、薬草は135種を数えます。4月の雪どけのあと春、夏、秋と季節を追うごとに様々な植物が花を咲かせ、夏場の山頂付近の群生地は花畑となります。
ポイント3
京都にも近く東西を結ぶ交通の要所に立つ伊吹山は古くからその名が知られ、古事記・日本書紀にもヤマトタケルノミコトの伝説で登場します。また山頂からは戦国合戦の舞台となった賤ヶ岳や姉川の古戦場、浅井三代の居城があった小谷山、天下分け目の戦いで知られる関ケ原などを見渡せます。
エリア | 北陸・近畿 |
---|---|
標高 | 1,377m |
適期 | 5月~11月 |
アクセス | ■電車・バス・タクシー JR東海道本線近江長岡駅→伊吹山登山口(近江鉄道・湖国バス)所要約16分 JR北陸本線長浜駅→伊吹山登山口(近江鉄道・湖国バス)所要約47分 ●車 名神高速道路関ケ原ICから登山口の伊吹三之宮神社まで約20分 |
備考 | 百名山 |
RECOMMEND
三之宮神社から登る人気の「表登山道」
伊吹山への登山ルートはいくつかありますが、一番人気があるのが山麓の三之宮神社からの表登山道です。登山口から一合目までは樹林帯の中を進みます。それ以降は山腹を登るため、眺めが良い反面、日差しを遮るものがないので帽子や日焼け対策は万全にしましょう。三合目には現在は運休中の伊吹山ゴンドラの終点の建物があり、ここにはお手洗いもあります。五合目を超えると道はジグザクに登りどんどん高度を増していきます。登るにつれて眼下に琵琶湖が大きく広がり、その向こうには比良山地、南側には鈴鹿北部の山々が見えてきます。九合目に来ると道は山頂周遊路に出て、ここから山頂は10分ほどです。ドライブウェイを利用して山頂に来ている観光客も増えてきます。山頂にはヤマトタケルノミコトの像が立ち、食事をとれるレストハウスが立ち並び、とても賑やかです。
[往路] 三之宮神社…三合目…五合目…九合目…山頂
[復路] 山頂…九合目…五合目…三合目…三之宮神社
… 徒歩
三之宮神社は登山口に立つ伊吹山の守り神の神社です。山頂に一之宮、中腹に二之宮、登山口に三之宮となり、現在は三之宮のみが鎮座しています。神社周辺には車で来た方のために駐車場が多くあります。伊吹山は環境保護や登山道の整備を目的とした入山協力金をお願いしています。(1人300円/協力は任意)登山口の横の案内所で支払います。シーズン中の土日祝日および夏休み期間は収受員がおり、登山道の情報や高山植物が記載されたパンフレットをもらうことができます。
登山口から1時間半程度登り続けると少し開けた場所にでて、広々としたススキが茂る中にお手洗いやあずまやが立つところが三合目です。このあたりから眼下に長浜の街と琵琶湖が見えてきます。2010年までは伊吹山スキー場があり、山麓から三合目までゴンドラが、その上には3基のリフトが稼働していました。採算性や雪不足などの理由で閉鎖されてしまいましたが、現在も一部の建物が残されています。 ここから先はさらにのぼりの角度が急になるため水分や行動食を補給したり、靴ひもを直したりして登山の体制を整えましょう。
急な登山道を登りつめ、九合目に来ると伊吹山山頂周遊路に出ます。山頂周遊路は伊吹山ドライブウェイの終点駐車場からもアクセスできるので多くのハイカーでにぎわっています。周遊路周辺は一帯が貴重な亜高山植物の群生地で国の特別天然記念物に指定されているので、間違って人が踏み荒らさないよう両サイドが金網で囲われています。10分ほど歩くと山頂に到着、ヤマトタケルノミコトの石像が出迎えてくれます。周辺には食事をとれる売店や休憩ができるベンチなどが数多くあります。山頂からは西に琵琶湖とその向こうに比良山地、南に鈴鹿山脈の山々と広々とした濃尾平野が広がり、東から北にかけてはの御嶽山、乗鞍岳、白山連峰などの山々が見られ、まさに360度の展望を楽しめます。
伊吹山山頂周遊路は、伊吹山の山頂部をぐるりと一周する散策路で1時間10分程度で一周できます。山頂部周辺は貴重な亜高山植物の群生地となり、夏場は可憐な花々が咲き乱れています。イブキトラノオ(6月下旬~8月下旬)、イブキシモツケ(5月下旬~6月中旬)、イブキコゴメグサ(9月中旬~10月上旬)、イブキトリカブト(8月上旬~10月上旬)など「イブキ」の名前がついた固有種が多くみられるのが特色です。山頂周遊路の途中には伊吹山ドライブウェイの山頂駐車場があり、4月第3土曜日から11月最終日曜日までの開通期間はここまで車で上がってくることができます。駐車場には展望テラスもあり、琵琶湖や白山、乗鞍などの山々を望むことも出きます。
伊吹山ドライブウェイを利用して楽々登山
伊吹山には九合目まで自動車で登ることができる伊吹山ドライブウェイがあります。夏休みシーズンにはJR東海道本線関ケ原駅や東海道新幹線の米原駅から山頂へのバスも運行しているので、登山道の上り下りが体力的に厳しい方はこちらを利用しましょう。ドライブウェイの終点から山頂へは3本の登山道で繋がっていますが、道幅もあり傾斜も緩やかな西登山道がおすすめです。山頂まで約1km・40分の行程です。最短距離で登るなら山頂まで500m・20分の中央登山道ですが、西登山道に比べると勾配は急で階段が多いルートになります。もう一本の東登山道は、山頂から駐車場へ下るための「一方通行」で利用するのがマナーとなっているので、注意が必要です。西と中央のルートは軽装(ジーパンにスニーカー程度の装備)で歩けますが、東登山道を利用する場合は軽装は避けたほうが無難です。
一合目から山頂まで眺めの良い人気の表登山道ですが、難点は木陰がなく夏の日中はかなり強い日差しにあたりながら登らなければいけないことです。時には熱中症になり命の危険にさらされることもあります。そのため特に真夏は気温がまだ上がらない夜明け前から未明にかけて登り、山腹または山頂でご来光を見て朝のうちに下ってくる夜間登山に挑戦してみるのも面白いでしょう。もちろんヘッドライトなどの夜間装備は必須ですが、長浜や彦根、遠くは岐阜や名古屋の夜景を見ながら登るのも昼間の登山にない魅力です。山頂でご来光を見るには7月頃であれば午前1時頃から登り始めないと日の出に間に合わないかもしれないですが、夏の最盛期は伊吹山ドライブウェイは午前3時から通行できるので、車で上がれば十分余裕を持って山頂からご来光を拝めます。
ほとんどの登山者が日帰りで下山する伊吹山ですが、山頂にある山小屋「松仙館 山のカフェ」では宿泊もできます。琵琶湖を赤く染めて比良山地へ沈む夕日、遠くに見える岐阜や名古屋の夜景、そして満点に広がる星空は宿泊した人だけが見られる特別な景色です。もちろん朝はご来光を拝んだ後、人のいない山頂周遊路を散策して朝露に濡れてキラキラ輝く高山植物を楽しみましょう。また、夏には山小屋周辺ではホタルが辺り一面に飛び交います。その幻想的な光景はこの場所でしか見られない贅沢なひと時といえるでしょう。
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