Fujisan
はじめての登山・トレッキングからベテランまで登る、懐の深さも日本一の山
FEATURE
富士山は言わずと知れた日本一の標高を誇る山です。日本百名山に選ばれているのはもちろん、世界文化遺産にも認定されています。日本で生まれたなら一度は登ってみたいと思う日本のシンボルです。小学生から高齢者まで登ることができる懐の深い山ですが、日本一の標高はなかなか手強いです。富士山は他の山にはない独特の特徴や歩きの方があります。知識と情報を得ることで富士登山はグッと身近なものになりますので、まずは富士山を知ってください。
ポイント1
富士山の山頂は日本一標高が高い展望台といってもよいでしょう。関東平野や箱根、伊豆、南アルプス、北アルプス、八ヶ岳、秩父の山々など見る場所によって景色が次々と変わります。そして、富士登山といえば「ご来光」です。ご来光とは、山頂などから見る日の出のことで、特に日本一高い場所から見るご来光は感動的で、長く記憶に残るものになるでしょう。
ポイント2
富士登山の歴史は長く、江戸時代には「富士講」という富士山信仰が大流行しました。昔は信仰的な意味合いが強かった富士登山ですが、今ではレジャーとして親しまれています。しかし、信仰心が薄れた現代にあっても、日本人の心には富士山に登りたいという思いが深く根付いているようです。富士山の2019年の登山者数は約23万人です。登山者数が最も多い山は年間300万人超といわれる東京都の高尾山ですが、富士山はたった2ヶ月ほどの登山シーズンで、さらに日帰り登山が少ないということを考えると、最も人気がある山ということがいえます。
ポイント3
富士山の山頂一帯は海抜3,700mを超えます。この高さでは酸素は平地の約3分の2で、気温は約20度下がります。この高度は人間の体にも影響を与えます。いわゆる高山病で、頭痛、吐き気、倦怠感などの症状を引き起こすことがあります。しかし、自分の足で3,700m超の世界へ行けるのは日本では富士山しかありません。平地では決して体感できない特別な世界です。
エリア | 北関東・秩父・南関東 |
---|---|
標高 | 3,776m(剣ヶ峰) |
適期 | 7月~9月 |
アクセス | スバルライン五合目(吉田ルート) ■電車・バス・タクシー 富士河口湖駅、富士山駅より路線バスにてスバルライン五合目へ50~60分 ●車 中央自動車道河口湖ICまたは東富士五湖道路富士吉田ICより富士スバルライン経由でスバルライン五合目へ ※登山シーズン中はマイカー規制期間あり 富士宮口五合目(富士宮ルート) ■電車・バス・タクシー 新幹線・新富士駅より路線バスにて富士宮口五合目へ約2時間 ●車 東名高速道路御殿場ICまたは裾野ICより富士山スカイライン経由で富士宮口五合目へ ※登山シーズン中はマイカー規制期間あり |
RECOMMEND
最短ルートで登り、宝永山を経て下る変化に富んだルート
富士山には4つの登山ルートがあります。最も登山者が多い「吉田ルート」は山小屋が多く、また、どこからもご来光を見ることができます。他に「御殿場ルート」「須走ルート」がありますが、二番目に登山者が多い「富士宮ルート」をご紹介します。最も標高が高い登山口からスタートしますので、山頂までの距離と時間が短くなります。日帰り登山でもよく利用されるルートです。しかし、急な登りが多く、登りと下りのルートが同じなので混み合って歩きにくい場合もあります。そこで、下りは「御殿場ルート」を利用して途中から「富士宮ルート」に合流する変則ルートで歩いてみましょう。「大砂走り」を体験したり、富士山の寄生火山である「宝永山」を間近に見ることができる変化に富んだルートとなります。
1日目:富士宮口五合目…(富士宮ルート)…七合目(泊)
2日目:七合目…富士山頂上浅間大社奥宮…剣ヶ峰(標高3,776m)…(御殿場ルート)…(大砂走り)…宝永第一火口…富士宮口五合目
… 徒歩
富士宮口五合目は、富士山の4つの登山道のひとつ「富士宮ルート」の起点です。ここの標高は2,400mで、富士山の登山口の中では最も標高が高い場所です。表富士周遊道路(通称:富士山スカイライン)の終着点でもあり、自家用車で行ける日本最高地点となります。富士登山シーズン中はマイカー規制があり、規制期間中は麓の水ヶ塚駐車場から有料のシャトルバスでアクセスができます。売店(2021年現在、レストハウスは休館)とトイレが設置されていますので、登山の準備をしっかりして歩き始めましょう。
富士宮ルートのゴールになる鳥居をくぐると富士山本宮浅間大社の奥宮が鎮座しています。この地点の標高は3,712mです。富士山の8合目以上は国有地ではなく浅間大社の境内ということになっており、神聖な場所となります。浅間大社は富士山そのものをご神体としており、祭神は木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)という女神です。ここでは頂上限定のお守りやおみくじをいただくことができます。また、社務所内には日本最高所の郵便局があり、登山シーズン中は郵便を出すことができます。
富士山の最高地点は剣ヶ峰(標高3,776m)で、「日本最高峰富士山剣ヶ峰」と記された石柱があり記念写真の絶好ポイントです。近くには(旧)富士山測候所が建っています。現在は使われていませんが、かつて日本の気象観測を支えた貴重な施設として一見の価値があります。剣ヶ峰に立った後はお鉢巡りをしてみましょう。お鉢巡りとは、富士山山頂の火口の周囲をぐるりと一周することです。約1時間30分ほどかかりますので時間と体力に余裕があればぜひ歩いてみましょう。
下山はまず御殿場ルートから歩いてみましょう。しばらくはゴツゴツした溶岩の急な下りが続きますが、しばらく歩くと砂道に変わります。7合目あたりからは富士山の下山道で一度は歩いてみたい「大砂走り」です。緩やかな斜面を砂を踏みながらテンポよく下ることができます。怪我防止のためには「走らず」ゆっくり下りましょう。ストックを2本使い、登山靴内に砂を侵入させないようにスパッツを装着すると安心です。
宝永山、富士山の山頂から南東斜面にある側火山(寄生火山)で、江戸時代の宝永大噴火の際に誕生したことからこの名がついているようです。山頂の標高は2,693mで、北陸の名峰・白山の最高地点とほぼ同じ高さです。富士山の中腹にありながらこの高さは富士山の雄大さを物語っています。宝永第一火口からは目の前にそびえる火山灰の大きな塊のような宝永山を間近に見ることができます。宝永山は富士山口五合目からの日帰りトレッキングでも人気のコースです。まるで砂の星に舞い降りたような絶景を楽しむことができます。
富士山は眺めるだけでなく、ぜひ登ってみましょう。
「富士山に一度も登らぬ馬鹿、二度登る馬鹿」という言葉があります。富士山は誰もが登ってみたい日本一の山ですが、山頂までの険しい道のりから「富士山は二度登る山ではない」という意味なのでしょう。しかし、富士山の魅力に取りつかれて毎年登る登山者はたくさんいます。その最大の魅力は山頂からの雄大な景観でしょう。「ご来光」は山頂などから見る日の出のことで、雲海から姿を現す太陽は感動ものです。そして、「お鉢巡り」は、富士山の山頂は巨大な火口でその回りをぐるりと一周することです。歩くごとに変わる景色は「日本一の展望台から見る絶景」と言ってよいでしょう。東京の街並み、太平洋、付近の山々、南アルプスや北アルプスなど、3,700mを超える場所からの、ここでしか見られない景観です。条件がよければ富士山の影が雲海や麓の風景に映し出される「影富士」を見ることができます。
富士山にはおよそ50軒の山小屋があるといわれています。特に吉田ルートでは7合目から8合目付近にずらりと山小屋が並んでいます。これだけの数の山小屋がある登山ルートは他にはないでしょう。富士山の山小屋といえば「混雑する」「窮屈」「食事が質素」などのマイナスのイメージが強いのですが、たった2ヶ月ほどの登山シーズンに数十万人の登山者が訪れる富士山ではサービスが後回しになっても仕方ないかもしれません。また、富士登山では「泊まる、くつろぐ」というより「休む、仮眠する」という目的の方が大きいので尚更です。しかし、最近では個室対応ができる山小屋がほとんどで、食事などのサービスにも力をいれる施設も増えています。
富士山を無時に下山したら疲れた体を温泉で癒しましょう。富士山の登山口周辺には日帰り温泉施設が幾つかありますので事前にチェックしましょう。ちょっと足を伸ばせば箱根や伊豆、石和など富士山周辺には温泉地がたくさんあります。せっかくなので温泉でもう1泊というプランもよいかもしれません。富士山周辺のグルメでよく知られているのは富士吉田市の「吉田のうどん」、そして、富士宮市の「富士宮焼きそば」です。「吉田のうどん」は硬くてコシのある麺にあっさりした味付けの汁、付け合せには茹でキャベツや油揚げ、甘辛く味付けされた肉などと、一度食べたら病みつきになる味です。「富士宮焼きそば」は、富士山の湧水を使って調理され、弾力抜群の麺に肉かすやイワシの削り粉をまぶしています。いずれも食べ応え満点です。ご当地グルメは地元でも提供するレストランが多く、下山してすぐに食べられるのが嬉しいです。
Recent Articles