Kujusan
九州の屋根と呼ばれ、登山者に愛され続ける山
FEATURE
九重山はくじゅう(九重)連山とも呼ばれる大分県の山岳地帯です。主峰の久住山は日本百名山に選ばれていますが、九重山の最高峰は中岳で、九州本土の最高峰でもあります。九重山は、西側に九重山、中岳、三俣山などが連なる九重山系と、東側の大船山、平治岳などからなる大船山系に分かれ、中間の坊ガツルを挟んで対峙しています。初夏のミヤマキリシマ、秋の紅葉、冬景色など、四季折々の景観が楽しめます。
ポイント1
九重山は火山帯特有のダイナミックな景観が楽しめます。九州のほぼ中央にあり、周辺には久住高原や飯田高原などの雄大な草原や、坊ガツル湿原やタデ原湿原などのラムサール条約登録湿地などが点在しています。九重山、中岳、大船山など、1,700m級の山々が連なり「九州の屋根」とも呼ばれています。
ポイント2
九重山はメインの登山口が標高1,000m~1,300mと高い場所にあり、登る山の標高は最高地点でも1,800m未満で、比較的アップダウンが少ないことが特徴です。日本アルプスのように、1,000mを超える標高差や、急峻でスリリングな岩場を歩くことはありません。小さなアップダウンを繰り返すことはあり行程も長くなりますが、一般的な体力と、しっかりした装備があれば初級者でも歩くことができます。
ポイント3
九重山はミヤマキリシマが咲く山として知られています。「坊がつる讃歌」にも歌われたミヤマキリシマは、5月下旬から6月中旬頃に大船山や平治岳の斜面を鮮やかなピンク色に染めます。そのほかにもイワカガミ、ツクシシャクナゲ、コケモモ、リンドウなどの花々があちこちに次々に咲きます。10月中旬~11月中旬には錦秋に彩り、冬には雪と樹氷が白銀の世界となります。九重は四季折々の違った表情を見せてくれます。
エリア | 九州・沖縄 |
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標高 | 1,786m(九住山) |
適期 | 4月~11月 |
アクセス | ■JR・バス JR久大本線豊後中村駅から日田バスで約1時間5分 ●車 九重ICより牧ノ戸峠へ約23km、または湯布院ICより約33km |
備考 | 百名山 |
RECOMMEND
九重山の主要な山を日帰りで楽しむコース
九重山の主峰・久住山と最高峰の中岳に登る贅沢な日帰りコースです。登山口は牧ノ戸峠で、すでに標高1,300mを超えます。初めのピークである沓掛山(くつかけやま)までは斜度のある登りが続き、やがて緩やかな稜線になり、阿蘇方面の広々とした展望が存分に味わえます。その後、九州本土最高峰の中岳まで足を伸ばし、御池を巡って下山します。気持ちの良い稜線歩きと九重山の核心部が楽しめます。歩行距離は10kmを超え、所要は約5時間30分で、日帰りとしてはやや長めの行程となります。夏はもちろんですが日の短い秋は特に早めに出発をしましょう。
[往路]牧ノ戸峠…沓掛山…九重山
[復路]九重山…中岳…御池…沓掛山…牧ノ戸峠
… 徒歩
牧ノ戸峠は標高1,330mのやまなみハイウェイ最高到達地点であり、九重山や中岳への主要な登山口として利用されています。バスや車でアクセスすることができて、レストハウスやトイレもあるので安心です。牧ノ戸峠を出発し、舗装された急坂を10分ほど上がると展望台があり、飯田高原を一望することができます。牧ノ戸から最初の30分ほどは沓掛山へ続く急な登りです。コンクリート舗装や階段があるので、ゆっくり登りましょう。
牧ノ戸峠から沓掛山(くつかけやま)までは急な登りが30分ほど続きますが、沓掛山を過ぎると気持ちのよい稜線歩きになります。コースから少しそれた扇ヶ鼻や星生山はミヤマキリシマや紅葉の観賞スポットで、景観に優れています。広葉樹が広がる山肌が一望でき、高度感がある雄大な風景を楽しむことができます。すがもり避難小屋がある鞍部へ下り、久住分かれへ続きます。ここから九重山頂までは急な登りとなります。
九重山は標高1,786mの九重山を代表する山です。その美しいピラミダルな容姿と品格から日本百名山を著した深田久弥は「九重一族の長」と称えました。最高峰は中岳に譲りますが、各方面から登山道が通じる人気の山です。山容は南側はやさしく、西側からは鋭い三角峰に見え、その姿は東洋のマッターホルンに例えられます。山頂からの展望は、九重山の名峰を間近に見て、遠くは、阿蘇山や祖母山、傾山(かたむきやま)などの山々の風景が一望できます。北斜面にはコケモモ、南斜面にはミヤマキリシマの大群落があり、初夏には可憐な花で埋め尽くされます。
中岳は標高1,791mで九重山、そして九州本土の最高峰です。岩稜を有した山頂からは、坊ガツル湿原と平治岳・大船山の眺めが広がります。御池越しの九重山や星生山、稲星山など、くじゅう連山の主峰が織りなす景色は、くじゅうの奥座敷とも言える風景です。植生も豊かで、風が弱いときにはキツツキが木をつつく音が静かな森に響き渡ります。御池は夏にはエメラルドグリーンの池となります。西側にある火口跡の空池には全く水がないのに、不思議なことに、空池よりも標高が高い位置にある御池には、涸れることのない水がたたえられています。冬には全面凍結し、ソリやスケートなどを楽しむ登山者もいます。
花や紅葉の観賞、秘湯など、九重山は楽しみ方が豊富
ミヤマキリシマは低木のツツジの一種で主に火山山頂帯に群落をつくります。九州各地の高山に多く自生し、その名に冠された霧島山やえびの高原のほか、阿蘇山、雲仙岳、鶴見岳などに分布しています。 九重山でも開花のシーズンになると、山肌を一面ピンクに染めるミヤマキリシマを見ようと大勢の登山者が訪れます。ミヤマキリシマは九重山のほぼ全域で見られ、標高の低いところから開花しはじめ、多くの登山ルートで観賞できますが、中でも大船山や平治岳の群落が美しいことで有名です。
坊ガツルは九重山の主峰・久住山から5kmほど北東にある湿原です。ラムサール条約登録湿地となっており、リュウキンカ、サワギキョウなど、数々の湿原植物や、キセキレイやカワガラスなどの鳥類が生息しています。また、九州では数少ない山中のテント場であり、初夏から秋には色とりどりのテントが所狭しと立ち並びます。坊ガツルを有名にしたのは、昭和の時代にヒットした歌「坊がつる讃歌」で、旅情感あふれる歌詞とメロディーで登山者に今でも愛される名曲です。
坊ガツルの近くにある法華院温泉山荘は標高1,300mの高さにある一軒宿です。九州唯一の営業小屋(避難小屋ではない管理された山小屋)で、九州最高地点にある温泉を楽しむこともできます。浴場は男女別の内湯となり、単純温泉で神経痛や疲労回復にも効果があると言われています。九州最高峰の中岳や大船山などの山々に囲まれ、坊ガツルの大草原を見下ろす最高のロケーションですが、交通手段は徒歩のみで、正に「歩いてしか行けない秘湯」です。
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