Ozegahara
手つかずの自然と絶景に囲まれた国内随一のハイキングコース
FEATURE
尾瀬とは、尾瀬ヶ原、尾瀬沼や日本百名山の至仏山(しぶつさん)、燧ヶ岳(ひうちがたけ)等の総称です。日本有数の高層湿原であり、国立公園、国の特別天然記念物、ラムサール条約湿地として指定されています。ハイカー憧れの地・尾瀬ヶ原は、東西6km、南北2kmの広大な湿原で、例年5月上旬までは雪で覆われ、雪解けは5月中旬、初冠雪は10月末頃となります。日帰りでもハイキングできますが、尾瀬を満喫するには山小屋に宿泊することをおすすめします。夕暮れや早朝の静かな雰囲気を感じ、夜は満天の星空を見上げましょう。
ポイント1
尾瀬で観賞できる花の種類は900以上と言われ、観賞できる時期は5月中旬から9月下旬頃です。花を楽しむ場所はたくさんありますが、歩きやすい尾瀬ヶ原で観賞するのがおすすめです。湿原の雪が解ける5月下旬頃から尾瀬のシンボルであるミズバショウが咲き始め、その後、ワタスゲ、レンゲツツジ、ニッコウキスゲ、カキツバタなどが湿原を代わる代わる彩っていきます。
ポイント2
イワショウブ、サワギキョウ、ミズギク、エゾリンドウが咲くと花の季節は終わりを告げ、湿原は秋色に変わります。9月下旬頃から湿原の植物は草紅葉として紅い色となり、 10月上旬には山々が紅葉します。ブナやダケカンバの黄、ナナカマドの赤、まるで水彩画のような美しい色彩でハイカーを楽しませてくれます。紅葉が終わる10月中旬頃から尾瀬の植物は雪によってやさしく覆われていきます。
ポイント3
尾瀬の環境保護の歴史は日本の環境保全の歴史そのものと言っても良いでしょう。尾瀬の開拓が始まった明治時代より尾瀬を保護しようという動きがあり、戦後にハイキングブームが訪れた頃には環境破壊を危惧する声が盛んに上がるようになりました。現在では、国立公園や国の特別天然記念物、ラムサール条約湿地に指定され、湿原には木道が整備されています。木道は尾瀬の風景のひとつと化し、全長は60km以上に及びます。
エリア | 関東 |
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ジャンル | 日帰り、宿泊 |
レベル | はじめて、初級、中級 |
歩行時間 | 1日目:約3時間00分、2日目:約6時間30分 |
歩行距離 | 1日目:約9km(鳩待峠〜山の鼻~竜宮~見晴)、2日目:約15km(見晴~三条の滝~ヨッピ吊橋~山の鼻~鳩待峠) |
アクセス | ■電車・バス 上越新幹線・上毛高原駅より尾瀬戸倉まで路線バスで約1時間50分、尾瀬戸倉から鳩待峠まで乗合バス又はタクシー利用で約25分 ■車 関越自動車道・沼田ICより尾瀬戸倉まで約1時間、尾瀬戸倉より鳩待峠まで約30分 ※マイカー規制時期や混雑時は尾瀬戸倉よりシャトルバス又はタクシー利用 |
RECOMMEND
尾瀬は日帰りでもハイキングを楽しむことができますが、尾瀬の魅力を感じるには山小屋に泊まって2日間以上の日程で歩くことをおすすめします。尾瀬には山小屋が20以上ありますが、最も数が多い場所は見晴です。関東方面からアクセスがしやすい鳩待峠を起点として山小屋に1泊するコースをご紹介します。体力的に自信がない場合は三条の滝をカットしてもよいでしょう。
1日目:鳩待峠…山の鼻…牛首分岐…竜宮十字路…見晴(泊)
2日目:見晴…三条の滝…東電分岐…ヨッピ吊橋…牛首分岐…山の鼻…鳩待峠
尾瀬の玄関口はいくつかありますが、関東方面からは鳩待峠が便利です。鳩待峠には山小屋や休憩所があります。売店やレストラン、トイレがあるので、まずは準備時間をとりましょう。鳩待峠を出発し最初に山の鼻を目指します。往路は約1時間下りの道のりで、急な坂道や階段があるので、スリップに気をつけて歩きましょう。山の鼻は尾瀬ヶ原の入り口です。山小屋やトイレがあるので休憩を取り、時間があればビジターセンターで尾瀬の勉強をするのも良いでしょう。
山の鼻を出発すると、いよいよ尾瀬の広大な湿原です。ここからは木道が続くので、歩き方に注意しましょう。木道は対面通行で右側を歩くことが基本ですが、朽ち果てている木道では安全な方を歩きましょう。すれ違いではお互いに声を掛け合って、足元に注意しましょう。雨や露で濡れている場合はたいへん滑りやすくなるので、固くて重い登山靴より、柔らかくて軽いハイキングシューズがおすすめです。湿原には池塘(ちとう)と呼ばれる小さな沼がたくさん見られます。池塘は尾瀬の風景を形づくる重要な要素のひとつです。尾瀬ヶ原の中間定点の牛首、十字路がある竜宮を越えると群馬県と福島県の県境となり、間もなく見晴に到着します。
見晴は尾瀬で最も山小屋の多い場所で、木道や登山道が東へ伸びます。見晴の山小屋で宿泊して、夕方や早朝の静かな尾瀬を満喫しましょう。夜は満天の星空を観賞できます。尾瀬ケ原はアップダウンはほとんどなく、標高は約1,400mです。夏でも朝晩は肌寒くなるので防寒具が必要です。翌朝、見晴を出発して、「日本の滝100選」にも選ばれた三条の滝に向かいます。三条の滝までは木道だけでなく山道もあるので、ゆっくり、足元に注意して歩きましょう。三条の滝は尾瀬ヶ原から流れ落ちる只見川の上流の滝です。落差は約100m、幅約30mという巨大な滝で、その水量は日本一とも言われています。
三条の滝から戻り、東電分岐から往路とは違った道を歩きます。東電小屋を越えると、ヨッピ川に架かる吊橋があります。このヨッピ吊橋を渡ると1時間弱で牛首分岐に合流します。尾瀬ヶ原は二つの日本百名山に挟まれおり、東の福島県側には東北最高峰の燧ヶ岳(ひうちがたけ)(標高2,356m)、西の群馬県側には至仏山(しぶつさん)(標高2,228m)があります。いずれも中級レベル以上の本格的な登山となりますので、登山道に迷いこまないよう注意しましょう。山の鼻で休憩して登りの道を歩くと鳩待峠に戻ります。
はじめてから経験者まで、何度も訪れたい尾瀬の魅力
尾瀬は花の宝庫で、里山で見られるような植物から高山植物まで数え切れないほどの花々が競うように咲きます。至仏山や燧ヶ岳へ続く登山道には固有種も見ることができます。春から初夏にかけてはミズバショウが咲き、初夏はワタスゲやニッコウキスゲなど尾瀬を代表する植物が見ごろを迎えます。秋には湿原を赤く染める草紅葉、山々の紅葉がハイカーの目を楽しませてくれます。広大な尾瀬では場所によって花や紅葉の時期が変わりますので、中級者以上であれば行動範囲を広げて歩いてみるのもおすすめです。尾瀬ヶ原より400mほど標高が高いアヤメ平では湿原に咲く花の時期も少し遅くなり、紅葉は少し早くなります。そして、尾瀬では10月には初冠雪の時期を迎え、雪に覆われた山々の風景は言葉にできないほどの美しさです。四季折々の風景を楽しめる尾瀬はまさにハイカーの楽園です。
尾瀬のハイキングは日帰りでも楽しめますが、山小屋に泊まれば、より一層尾瀬の魅力を感じることができます。尾瀬には20以上の山小屋があり、それぞれに個性があるので何度訪れても楽しめます。また、尾瀬は水が豊富なことから山小屋でお風呂に入ることができます。三条の滝に向かう道の途中には温泉もあるので一度は泊まってみるのも良いでしょう。さらに尾瀬にはテント泊ができるキャンプ場もあります。山の鼻からはほとんどアップダウンがありませんので、テント初心者にもおすすめです。尾瀬の主なキャンプ場は山の鼻と見晴です。テント泊の場合は十分な装備と食料を準備しましょう。
尾瀬は写真撮影を楽しむにも最高のロケーションで、その理由は、花の時期が長く多種多様な植物が見られること、手つかずの自然が美しいこと、秋の紅葉も美しいこと、朝晩で風景が一変すること、そして、大きな山に囲まれていることです。西を見ても東を見ても2,000m級の山があり、山をバックにした風景写真を撮ることができます。山小屋に宿泊すれば夕方の静かな風景や朝の凛とした空気感を撮影できます。また、夜には満天の星空を撮影することもできます。尾瀬で写真撮影を楽しむためにはいくつかの注意点があり、まずハイキングの装備をしっかりそろえることからはじめましょう。ハイキングといっても大自然の中に長時間身を置くことには変わりないので、服装、持ち物・装備をしっかり準備しましょう。写真撮影のための機材を合わせて運ぶので中級者程度のレベルが必要です。また、木道ではハイカーの邪魔にならないよう配慮し、木道から外れて湿原に入らないように注意しましょう。
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